お墓参りの花は何を選ぶ?定番の種類と、季節ごとの選び方

お墓参りの花は何を選ぶ?定番の種類と、季節ごとの選び方

季節に出回っている花で差し支えありません。仏教六宗派の作法や仏事のページを一つずつ開いて確かめたところ、お墓に供える花の品種を指定した記述は見つかりませんでした。菊でなければならないという根拠は、宗教の側からは出てきません。

店先には「仏花」として束が並んでいます。それを買って持っていく。多くの場合、それで足ります。

迷いが出るのは、たいてい別のところです。着いてみたら花がぐったりしていた。前に誰かが挿した花がまだ残っていた。帰るときに持って帰るのか、置いていくのかが分からない。お墓掃除とお参りの代行をしていると、この三つについてご質問を受けることがよくあります。世に出ている解説の多くは花を挿したところで話が終わっていて、供えたあとに何が起きるのか、次に誰かが来るまでのあいだをどう考えるのかまでは、ほとんど書かれていません。

選ぶ、買う、運ぶ、挿す、そして帰りぎわ。花にまつわる手順はこの順に並んでいます。いちばん傷むのは、真ん中の「運ぶ」ところ。順に見ていきます。

花は、参る人のほうを向いて立っている

花立てに花を挿すと、花は参っている自分のほうを向きます。墓石の側でも、空の側でもありません。仏さまへ差し上げているはずのものが、供えた瞬間からこちらを向いて立っている。この向きに気づいて、挿し方を間違えたのではないかと心配される方が、ときどきいらっしゃいます。

この向きを「向下相(こうげそう)」という語で説明している寺院の記事があります。ただし、この語を用いた宗門公式の説明は確認できませんでした。教義上の裏づけがあるかどうかは、断定できません。

はっきりしていることもあります。花が、供養を構成する要素のひとつに数えられていることです。曹洞宗は、仏壇のお供えについて「お供え物は、5つのお供えが基本です。香り(線香、お香)、花、灯明、お水、飲食(お霊膳れいぜん、果物、菓子、嗜好品など)の5つです」と書いています。この五つをまとめて五供(ごくう)と呼びます。そのひとつが花です。線香や水と同じ列に並んでいて、そのうちのどれかが特別に重いという書き分けは、公式サイトのどこにも見当たりませんでした。

天台宗は、供養そのものを二つに分けて説明しています。「仏前に香・花・燈明やお供物などをお供えすることを供養と呼ぶようになりました」としたうえで、こう続きます。「お花やお香、お供物を奉げるのを『利供養』といい、これに対して、仏様の教えにしたがって日々修行をすることを『法供養』といいます。法供養と利供養の2つがあってはじめて本当の供養になるのです」

花は利供養の側にあたるわけです。物として差し出す供養。重心が置かれているのは差し出すという行いのほうで、どの花を持っていったかによって供養の良し悪しが決まる、という書き方を、今回開いた公式サイトはどこもしていませんでした。

お供え物全体の考え方はお供え物の意味と供え方に整理してあります。

仏花、墓花、供花。呼び分けの出どころが、はっきりしない

花屋や仏具店では、仏壇に供える花を仏花、お墓に供える花を墓花、通夜や葬儀に贈る花を供花と呼び分ける整理があります。店頭のポップにも、この三語が並びます。

この呼び分けを定めた公的な基準は、見つかりませんでした。今回開いた六宗派の公式サイトには、「仏花」という語そのものが出てきません。定義の出どころをたどっていっても、業界の慣用を超えて根拠を示した文献には行き当たらず、読み方についても、どれが正しいと決めた基準は確認できませんでした。

実務としては、そこまで気にしなくて構いません。花屋で「お墓に供える花を」と伝えれば通じます。墓前の花立てに収まる丈で組んでもらえることも多く、呼び名を正確に覚えるより、どこに供えるのかと花立ての深さを伝えるほうが、結果として早く済みます。

菊が定番になった事情は、宗教の側からは出てこない

仏花の束を開くと、たいてい芯に菊が入っています。白い大輪が一本、そのまわりに小菊。よく見る形です。この組み合わせが日本の墓前で圧倒的に多いことは、全国の霊園をまわって掃除をしていると、いやというほど実感します。

理由としてよく挙がるのは、花もちがよい、散っても花びらが散らばりにくい、香りが強すぎない、といったところです。もっともらしく聞こえます。ただ、この説明に出典を添えた記事はひとつも見つからず、そう説明されることが多い、というところまでが確かめられる範囲でした。

宗派の公式はどうか。六つの宗派の作法や仏事のページを開いてみましたが、「菊」という文字は一度も出てきませんでした。公式に具体名で登場する植物は、仏事に使われる常緑樹の樒(しきみ)と、真宗大谷派がいう「無色花」、つまり青い木花だけです。

では、菊でなければいけないのでしょうか。そうとは言えません。宗教が菊を定めた形跡は確認できず、代わりにはっきり裏の取れる根拠は、流通の側にありました。

農林水産省は、子ども向けの相談ページでこう答えています。「2025年産の切り花類の出荷量は、28億4,600万本で、1位きく、2位切り枝、3位バラです」。日本でいちばん多く出荷されている切り花が、菊だということです。年間を通じて安定して並び、価格も比較的落ち着いていて、仏花の束の芯にいつも菊が入っているのは、それが年間を通していちばん手に入れやすい花だからだと考えるほうが、順序として無理がありません。

宗教が菊を選んだのではなく、市場が菊を供給し続けた結果、墓前に菊が並ぶようになった。そう読むと、辻褄が合います。菊が悪いという話ではありません。定番であることに、宗教上の必然はなかった。それだけのことです。

裏を返せば、菊にこだわる必要もないわけです。故人が好きだった花、庭で咲いた花、その季節に安く出回っている花。どれを持っていっても差し支えありません。避けたほうがよいとされる花についてはお墓に供える花のタブーで扱っています。

宗派の公式が花について書いているのは、たいてい仏壇のほう

調べていて、もうひとつ分かりました。宗派の公式サイトに花の記述はあるのですが、その多くはお墓ではなく仏壇についての説明でした。

浄土宗は、お墓参りの手順のなかに「きれいになったらお花、お線香をあげ」と書いています。花は手順に入っていますが、種類の指定はありません。ここに出てくる水のかけ方については墓石に水をかける意味と作法で別に扱っています。

浄土真宗本願寺派も同じで、汚れを落としたあと「墓前に花やお香、供物などを供えて」と続けています。ここでも、花とだけ書かれています。

一方、真宗大谷派の記述はかなり具体的です。「お内仏の花瓶には樒ではなく、『無色花』と言って青い木花などを用います。色花は使いません」。これは中陰壇とお内仏、つまり仏壇まわりの飾り方についての説明で、お墓の花の話ではありません。

曹洞宗も同様でした。お彼岸の準備として「花は樒(しきみ)が一般的ですが、季節の新しい花を挿してあげれば、一層よいことです」と書いています。これも仏壇の飾り方の項に置かれた記述です。

色についての記述も見つかりました。浄土真宗本願寺派は、法事のおかざりについて「供花や供物の色も三回忌まではなるべく赤色を避けておかざりするようです」と書いています。「するようです」という、断定を避けた書き方。そしてこれも、法要の場のおかざりについての説明です。

宗派 公式サイトで確認できた記述 どこの花についての記述か
浄土宗 「きれいになったらお花、お線香をあげ、墓石に水をかけ」 お墓参りの手順。種類の指定は見当たらない
浄土真宗本願寺派 「墓前に花やお香、供物などを供えて」 お墓参りの手順。種類の指定は見当たらない
真宗大谷派 「お内仏の花瓶には樒ではなく、『無色花』と言って青い木花などを用います」 中陰壇とお内仏の飾り方
曹洞宗 「花は樒(しきみ)が一般的ですが、季節の新しい花を挿してあげれば、一層よいことです」 お彼岸の仏壇の飾り方
天台宗 「仏前に香・花・燈明やお供物などをお供えすることを供養と呼ぶ」 供養の定義。種類の指定は見当たらない
日蓮宗 墓前の花についての記述を確認できず —

並べてみると、お墓の花について宗派が指定していることは、ほとんどないと分かります。仏壇については書いている宗派があり、その場合も樒を挙げるか、色を抑えるようにという話にとどまります。ご自身の家の習わしが気になるときは、菩提寺(ぼだいじ。先祖代々のお墓があるお寺)にうかがうのが確実です。

季節ごとに、店先に並ぶものが入れ替わる

何を選ぶかは、突き詰めると「その時期に何が並んでいるか」でほぼ決まります。花屋の店頭は出回り期に従っていて、旬を外した花は高いか、そもそも入荷しません。もうひとつ効いてくるのが墓地の気温です。同じ花でも、8月の日なたと1月の日陰では、もちがまるで違います。

時期 店先に並びやすいもの 墓地の側で効いてくること
3月〜5月 菊、カーネーション、ストック、スターチス 日が伸びて、花立ての水温が上がりはじめる
6月〜8月 菊、グラジオラス、ケイトウ、ヒマワリ 直射と高温。水の減りが速い
9月〜11月 菊、リンドウ、ケイトウ、吾亦紅 朝晩が冷えて、もちが戻る
12月〜2月 菊、松、千両、南天、葉牡丹 水が凍る。落ち葉が墓所にたまる

夏は、日陰があるかどうかで別物になる

お墓掃除の代行でいちばん件数が多いのは8月で、この月だけで487件を数えます。お盆に集中するからです。ところがその8月の墓地は、石も砂利も焼けていて、花にとっては一年でいちばん厳しい環境になります。

石は熱を持ちます。花立ての水もぬるむ。風の通らない区画だと、供えた直後からしおれはじめることもあります。

切り花の日持ちについて、農研機構は「日持ち保証に対応した切り花の品質管理マニュアル 増補改訂版」を2014年3月に発行しています。その紹介ページで、このマニュアルを「日本は欧米に比べて夏の気温が高いことから、夏季の高温に対応した技術開発を行い、日本国内での日持ち保証に対応した品質管理マニュアルになります」と説明しています。夏の高温は、生産と流通の側でも品質管理上の課題として扱われている、ということです。

夏に持っていくなら、茎が太くて水を上げる力のあるもの、葉の少ないもの、蕾が固めのものが向きます。ヒマワリのように葉の大きい花は墓前で映えますが、その大きな葉から水が抜けていくぶん、供えた翌日にはもううなだれていることがあります。買うときに下葉を落としてもらう。それだけで違います。

もうひとつ、夏は花立ての水が減ります。満水にしておいても、二日ほどで底が見えることがある。お盆の前後に何度か足を運べるなら、そのたびに水だけ足しておくと長くもちます。お盆の日程や過ごし方はお盆の由来と過ごし方にまとめています。

冬は、花立ての水が凍る

冬の墓地で起きるのは、夏の逆です。花そのものは長くもちます。気温が低いぶん、菊なら一週間以上きれいなままのこともあります。

厄介なのは水です。氷点下になる地域では、花立てに残した水が凍ります。凍れば体積が増えますから、内筒や花立て本体に負担がかかり、積雪のある地域では、帰りぎわに花立ての水を抜いてから戻る方もいらっしゃいます。花立て本体の手入れは花立ての掃除方法で扱いますが、冬に水を張ったままにするかどうかは、地域によって判断が分かれるところです。

12月に入ると、店先の顔ぶれが変わります。松、千両、南天、葉牡丹。正月用の枝ものは日持ちがよく、寒さにも強い。年末に供えて、年始にもう一度うかがうという段取りとも相性がよいのです。

気をつけたいのは、雪の下になる区画です。花が雪に埋まると、雪解けのあとに茎と葉が一面に散らばって、春先の掃除がそのぶん増えます。積雪地では、花を供えずに手を合わせるだけ、という方も少なくありません。

春と秋は、彼岸の店頭事情で決まる

春と秋は、お彼岸が基準になります。この時期に何を供えるかは、春のお彼岸の花とお供え物と秋のお彼岸の花とお墓参りで品種ごとに整理してあります。

ひとつだけ実務の話を。彼岸の入りから中日にかけて、花屋の店頭は品薄になります。中日の朝に買おうとして、束が残っていなかった。よくある話です。前日までに押さえておくほうが確実です。

買う場所は三つ。値段より、着いたときの状態で選ぶ

花を買える場所は、大きく分けて三つあります。花屋、スーパーやホームセンター、そして霊園の近くにある石材店や花店です。どれが優れているかという話ではありません。選ぶ基準が、それぞれ違うだけです。

買う場所 向いている場面 気をつけること
花屋 丈や色を指定したいとき。法要に合わせるとき 開店が遅めの店もある。前日までの予約が確実
スーパー・ホームセンター 早朝に出発するとき。価格を抑えたいとき 束の丈が短めのことがある。彼岸とお盆の前は品薄になる
霊園の近くの石材店・花店 遠方から手ぶらで向かうとき 定休日がある。霊園の中で買えるとは限らない

霊園の売店で買えるとは限らない

着いてから買えばいい、と考えて手ぶらで向かう方がいます。ここで足をすくわれます。霊園の売店で買えるのでしょうか。都立霊園の場合、答えは「園内では買えない」です。

公益財団法人東京都公園協会は、都立霊園のよくある質問で、園内では線香も花も販売しておらず、近隣の石材店や花屋で求めることになる、と案内しています。買うなら門の外へ、ということです。

これは2026年9月時点の記載です。案内は改定されますし、霊園によって事情も違います。初めて行く霊園、あるいは何年ぶりかの霊園なら、電話一本で確かめておくと確実です。私たちが掃除でうかがう霊園や寺院は全国に散らばっていますが、園内に売店があるかどうかも、門前の花店が何曜日に休むのかも、本当にばらばらでした。

相場と呼べる数字は、見つからなかった

いくら用意すればよいか。ここは正直に書きます。墓前に供える花の価格について、公的な統計や業界の平均値は確認できませんでした。

店頭を見て回ると、スーパーの小ぶりな束から、花屋で丈を指定して組んでもらう束まで、値段にはかなりの開きがあります。彼岸とお盆の前は上がる、という実感もあります。ただ、それを「相場は◯円です」と書けるだけの裏づけは持っていません。予算から決めるより、その日の店頭で状態のよいものを選ぶ。そのほうが長くもちます。

見分け方は、そう難しくありません。茎の切り口が茶色く変色していないか。下葉が黄ばんでいないか。蕾が固く締まっているか。この三つを見てから買えば、大きく外しません。

前の日に買うか、その日の朝に買うか

当日の朝に買えるなら、それがいちばんです。買ってから供えるまでの時間が短いほど、状態は保てます。

ただ、始発で出る、片道三時間かかる、開店前に家を出る。こうなると、前日に買うしかありません。

前日に買ったら、帰宅してすぐ包装をゆるめてください。束ねたビニールに入れたまま置いておくと、中が蒸れます。バケツに深めの水を張り、切り口を水中で斜めに切り直してから浸ける。置き場所は、涼しくて暗いところ。夏なら玄関の三和土や北側の部屋、冬なら暖房の入っていない部屋というように、家のなかでいちばん温度の低い場所を探して置いておくと、翌朝の状態がまるで違います。

やってはいけないことが、ひとつだけあります。買った花を、そのまま車に積んで一晩置くこと。夏の車内がどうなるかは想像がつくと思いますが、冬でも明け方の冷え込みで傷みます。

いちばん傷むのは、運んでいるあいだ

花の状態が落ちるのは、店でも墓地でもありません。その間の移動中です。ここに正面から触れた解説を、私はあまり見かけません。けれども、代行でお預かりした花や、ご一緒したご家族が持ってこられた花を見ていると、しおれの原因の大半はここに集まっていて、店を出てから墓前に着くまでの数十分が、その日のもちを決めてしまいます。

理屈は単純です。移動中の花は、水から離れています。切り花は切り口から水を吸って生きていますから、水のない状態で車内の熱と乾いた風にさらされれば、そのぶん消耗します。三十分の移動でも、条件が悪ければ目に見えて変わります。

車で行くとき

置き場所でほぼ決まります。後部座席の窓際は避けてください。直射が当たり、いちばん熱がこもる場所です。トランクも、夏は不向きです。

安定するのは、助手席か後部座席の足元です。日が当たらず、床に近いぶん温度も上がりにくい。エアコンの吹き出し口の正面も外してください。冷風でも温風でも、直接当たると花びらから水分が抜けます。

荷物の下敷きになりやすいので、花は最後に積んで最初に降ろす。この順番を決めておくだけで、花首の折れが減ります。寝かせて運ぶなら、花の頭を進行方向へ向けておくと、急ブレーキで茎が折れにくくなります。

切り口の手当てをしておくと、さらに違います。濡らした新聞紙かペーパータオルで茎の根元をくるみ、その上からビニール袋をかぶせて輪ゴムで留める。花屋で保水の処理をしてもらえるなら、それに任せて構いません。保冷剤を使うときは、花や葉に直接当てないでください。当たった部分が凍って、そこから茶色くなります。

電車やバスで行くとき

手提げ袋に立てて入れるのが基本です。横にすると、揺れているあいだに花首が擦れます。

夏は、駅と車内の温度差が意外にこたえます。冷房の効いた車内から炎天下のホームへ、そしてまた車内へ。この出入りを繰り返すうちに水が抜けていきます。新聞紙で全体をゆるく包んでおくと、冷たい風も熱い風も直接は当たらなくなるので、乗り換えの多い道のりでも、着くまで少しは粘ってくれます。

墓地に着いたら、供える前に一度、水汲み場へ寄ってください。バケツに水を張って切り口を数分浸ける。それだけで、しおれかけた花がいくらか戻ることがあります。水汲み場やバケツの有無も、事前に確かめておきたい項目です。

花立てに挿す前に、手を入れておく

墓前に着いてから供えるまで、手を動かすのは数分です。この数分で、そのあとのもちがかなり変わります。

束を留めているゴムやひもは、どこまで外すか

輪ゴムや麻ひもは、外してから挿します。束ねたままだと茎が密着して、水を吸う面が減るからです。挿したときの収まりも悪くなります。

包装の紙とビニール、保水用のゼリーやスポンジも、この段階ですべて外してください。ゼリーを付けたまま花立てに突っ込むと、水が汚れやすくなります。

外した包装材は持ち帰ります。都立霊園の案内では、掃除で出た草や枝葉は園内の「下げ花置き場」またはごみ集積場に捨ててよいとしたうえで、「お花を包んだ紙やビニール」は持ち帰るよう求めています。植物と包装材で、扱いが分かれているわけです。

花立ての深さに合わせて、茎を切る

花立ての口から底までは、思っているより浅いものです。買ったままの丈で挿すと、切り口が水に届かないことがあります。

目安は、花立ての深さの八割ほどまで茎が入る長さ。挿してみて、水面から茎が浮いているようなら切り足します。切るときは水中で、斜めに。空気が切り口に入ると、水の上がりが悪くなります。ハサミは切れるものを使ってください。潰れた切り口は水を吸いません。

花立てにぬめりや詰まりがあるときの洗い方は、花立ての掃除方法とぬめりの落とし方にまとめました。ここでは、古い水を捨ててから挿す、というところまでにしておきます。

水に浸かる葉は、落としておく

茎の下のほうについた葉は、取ってしまって構いません。水に浸かった葉は早く傷み、水を濁らせます。濁った水は、残っている花のもちも縮めます。

切り花の栄養剤を持っていく方もいらっしゃいます。花屋が束に付けてくれる、あの小袋です。効き方は品種と気温で変わりますから、必ずもつと断言はできません。使うなら、花立ての水量に合わせて量を加減してください。

すでに花が挿さっていたら

年に一度しか行かないお墓ほど、この場面に出会います。前に誰かが供えた花が、まだ残っている。

誰が供えたかが分かれば話は早いのですが、分からないことのほうが多いのです。同じ区画の別の家の方が気を利かせてくださった、法要で親族が来ていた、管理を頼んでいる石材店が入れてくれた。可能性はいろいろあります。

状態がよければ、抜かずに残して、空いている側にご自分の花を挿す。傷んで水が濁っているようなら、下げて、水を入れ替えてから挿し直す。下げた花の捨て場所は、その霊園の決まりに従います。判断に迷うときは、管理事務所に一声かけてから下げておくと、同じ区画の別のご家族との行き違いを避けられます。

夏の墓地で、花はどのくらいもつのか

ここは、数字で答えられませんでした。

切り花が何日もつかという公的な基準を探して、農林水産省と農研機構のページを当たりました。日持ち保証の制度も、品質管理のマニュアルも公開されています。「切り花は◯日もつ」という標準日数だけが、どちらのページにも見当たりませんでした。品種によっても、気温によっても、切ってから店に並ぶまでの時間によっても変わるからです。

そのうえで、現場の実感を書きます。真夏の墓地では、供えた花が数日で色を落とすことは珍しくありません。8月にうかがうと、お盆に供えられた花が茎だけになっていることもあります。逆に冬の日陰なら、二週間近く形を保っていることもある。同じ花でも、置かれる場所でこれだけ差が出ます。

もたせる方向で打てる手は、そう多くありません。花立てを満水にせず七分目にして水温が上がりすぎないようにする、日の当たりにくい側に丈の高い花を入れる、といったところです。それより効くのは、次に誰かが来る日から逆算して選ぶことだと思っています。

帰りぎわの扱いは、霊園によって正反対

供えた花は、置いて帰ってよいのでしょうか。答えは、霊園によって正反対です。ここまで指示が割れている項目は、お墓参りのなかでも珍しいと思います。

発行元 花とお供え物について書かれていること
公益財団法人東京都公園協会(都立霊園) 掃除で出た草や枝葉は各霊園の「下げ花置き場」またはごみ集積場へ。ただし「お花を包んだ紙やビニール」、菓子やくだもの等のお供物は持ち帰り
神戸市 「鳥や動物等がお墓を荒らす可能性があるので、お供え物・お花はお持ち帰りください。」
札幌市 「お供物は必ずお持ち帰りください。」「熊、カラス、キツネなどをおびき寄せる原因となります。」

都立霊園には、花を置いていける場所があります。神戸市は、花そのものを持ち帰るように書いています。札幌市はお供物について、持ち帰る理由まで添えている。熊、カラス、キツネ。土地が変われば、気にする相手も変わるわけです。

この違いは、マナーの優劣から来るものではありません。園内で回収する体制があるかどうか、周辺に何が棲んでいるか、という運用の事情です。「一般的にはこうする」という答えは作れません。行く先の案内に従う。はっきりしているのは、それだけです。

いずれも2026年9月時点の記載です。案内は改定されますので、お参りになる霊園の掲示やウェブサイトを、その都度ご確認ください。

管理事務所に、先に聞いておくこと

電話で確かめる項目は、多くありません。花を置いて帰れるか。下げ花置き場はどこか。包装材は持ち帰りか。水汲み場とバケツがあるか。開門と閉門の時刻。この五つで、当日の段取りはほぼ決まります。

寺院墓地なら、窓口は寺務所です。宗派や家の習わしにかかわることは、菩提寺にうかがってください。お参り全体の段取りはお墓掃除とお参りの手順とお墓参りの決まりと考え方に整理してあります。

持ち帰った花は、どうするか

持ち帰った花をそのまま処分するのは忍びない、という声をよく聞きます。

ご自宅に仏壇があれば、そちらへ移して構いません。玄関や居間に飾る方もいらっしゃいます。持ち帰った花を飾ってはいけないと定めた記述は、宗派の公式サイトでは確認できませんでした。傷んでからは、自治体の分別に従って処分します。

次に誰かが来るのが、一年後だとしたら

花選びの基準は、実はここで大きく変わります。

来週また来られるなら、その日いちばんきれいな花でいい。下げるのも自分だからです。ところが次にお参りするのが来年の同じ時期だとすると、供えた花はそこから一年近く、誰の手も入らないまま置かれることになります。花びらは落ち、茎は残り、花立ての水はなくなります。

この場合、取れる道は三つです。持ち帰る。形の残りにくい枝ものを選ぶ。あるいは、花を持っていかない。

では、花を持っていかない年があってもよいのでしょうか。差し支えありません。花を供えなければならないと定めた記述は、宗派の公式サイトでは確認できませんでした。浄土宗も浄土真宗本願寺派も、手順のなかに花を挙げてはいますが、供えなかった場合について何かを書いてはいません。手を合わせに行く。そちらが本体です。

造花を使うという選択もあります。霊園によって可否が分かれる話なので、お墓に造花を供えてよいかで別に扱います。花の本数についても同じで、一対、つまり左右の花立てにひと束ずつ用意するのが一般的とされていますが、数え方や地域差はお墓の花は何本供えるかにまとめました。

お参りの間隔が空くこと自体は、気に病まないでいただきたいと思っています。代行をご依頼くださった102名にうかがったところ、いちばん多かった理由は「しばらく行けてなくて気になっていた」で、52.9%でした。次が「掃除が体力的に負担」、その次が「行く時間が取れない」。行きたくないという方は、まずいらっしゃいません。距離と体力と仕事の都合が重なって、足が向かないまま何年か過ぎた、という話のほうが多いのです。

ご自身で行くのが難しいときは、掃除とお参りを代わりに引き受ける手もあります。花を持って行き、供えて、写真でご報告する。段取りはお墓参り代行のご依頼の流れにまとめてあります。

お墓の花についてよくある質問

花を買い忘れて着いてしまいました。買い直して戻るべきですか

そのままお参りいただいて差し支えありません。花がないと供養にならないと定めた記述は、宗派の公式サイトでは確認できませんでした。手を合わせて、掃除をして、水を替える。そのうちのひとつが花ですから、近くに花店があれば帰りに寄る、という程度で十分です。

すでに供えられていた花は、抜いてもよいですか

状態がよければ残して、空いている側にご自分の花を挿してください。傷んでいるようなら下げて、水を入れ替えてから挿し直します。下げた花の置き場所は、霊園の決まりに従います。

庭で咲いた花を持っていってもかまいませんか

かまいません。品種を指定した記述は、宗派の公式サイトでは確認できませんでした。庭の花は切ってからの時間が短いぶん、水が上がりやすいこともあります。切り口を水に浸けてから出発してください。

花の色に決まりはありますか

公式で確認できたのは、ひとつだけでした。浄土真宗本願寺派が、法事のおかざりについて「供花や供物の色も三回忌まではなるべく赤色を避けておかざりするようです」と書いています。ただしこれは法要の場の飾り方についての記述で、お墓の花を定めたものではありません。色をどこまで気にするかは、避けたい花とあわせてお墓に供える花のタブーで扱います。

何本用意すればよいですか

一対、つまり左右の花立てにひと束ずつ用意するのが一般的とされています。数え方や地域による違いは、本数に絞った記事で別に扱います。

造花でもかまいませんか

霊園によって扱いが分かれます。造花の可否と霊園ごとのルールは、造花に絞った記事で扱います。

神道やキリスト教のお墓でも、同じでよいですか

ここは確認できませんでした。神社本庁の公式サイトで、お墓に供える花について定めた記述を探しましたが、見つけられていません。榊を用いる、白い花を選ぶといった説明は流通していますが、出所を確かめられませんでした。氏子となっている神社、あるいは所属の教会にお尋ねください。

花を選んでいる時間は、たぶんいちばん短い

菊が定番なのは、宗教がそう定めたからではありませんでした。出荷量が一位だから、店に並ぶ。並ぶから、目にする機会が増える。それだけのことです。品種を指定した宗派の記述は、開いたページの範囲では出てきませんでした。

そのかわり、花について明文で決まっていたことが一つだけあります。帰りぎわの扱いです。都立霊園には花を置いていける場所があり、神戸市は花ごと持ち帰るよう書き、札幌市はお供物について熊とカラスとキツネの名前を挙げていました。どれが正しいという話ではなく、園内で回収する体制があるか、周りに何が棲んでいるか、という運用の違いです。

つまり、確かめる先は宗派ではなく、行く先の霊園でした。品種も、値段も、束の数も、そこから先は選ぶ側の裁量に入ります。今年は花を持たずに手を合わせるだけにする、という決め方も、同じ裁量のなかにあります。

墓前で花を挿している時間は、実際には一分か二分です。三十分迷って選んだ束も、挿してしまえばそれで終わる。それでも、水の上がった花はしばらく形を保ちますし、次に来た人の目にも入ります。

選ぶときに考えるとよいのは、何がふさわしいかより、次に誰がいつここへ来るか、のほうです。来週また来られるなら、好きな花を。一年後になりそうなら、持ち帰る前提で。行けない年があるなら、それはそれで構いません。花は、そこへ行った人がいたという印として、しばらく残ります。

お墓掃除
代行プラン

27 , 500 円 ~ 税込

墓石清掃・雑草除去・お花・お線香
実施後の報告書(写真・コメント付)

  • お墓1基、区画1坪、営業所から1時間以内の交通費含む

受付時間/平日10:00~18:00(土日祝休業)