お墓参りの持ち物リスト|最低限そろえたい道具と、現地で借りられるもの
手を合わせるだけの日なら、持ち物は多くありません。線香と、火をつけるもの。それに花。この3つで、墓前ですることは一通り済みます。
ややこしいのは、その3つを持っていくべきかどうかが霊園によって変わることです。園内で墓参花と線香を常時売っているところがあり、いっぽうで線香も花もいっさい販売していないと明記している霊園もあります。どちらも実在します。売店があるものと思って手ぶらで着いてしまうと、後者では何もできません。
そこで、順番を入れ替えます。持っていくものを決める前に、その霊園に何が置いてあるかを数える。足りない分だけ鞄に入れる。この順で組むと、荷物はかなり軽くなります。
数珠、半紙、湯呑、ろうそく。持ち物リストの定番として並ぶ品ですが、なくてもその日のお参りは成り立ちます。「これがないと失礼」という書かれ方をされがちなところですので、外せるものから外していきます。
手を合わせるだけの日に、要るものは多くない
掃除をしないと決めた日の荷物は、驚くほど小さくまとまります。
線香は要ります。墓前で焚くもので、代わりがききません。火をつける道具も一緒に持ちますが、マッチかライターを鞄に入れておくほかに、着火台を備えている霊園ならその場で使わせてもらえることもありますので、そこは行き先によって変わります。本数や立て方はお線香の意味と本数にまとめてあります。
花は、持っていくか現地で買うかの二択です。前の花が残っていれば下げて帰ることになりますので、下げ花置き場の位置を先に見ておくと動きが楽になります。
水は、原則として持っていきません。水汲み場のある墓地なら現地で足ります。2リットルのペットボトルを鞄に入れて電車に乗ると、それだけで荷物の重さが別物になってしまいますし、着いてみたら区画のすぐそばに水道があった、ということも起こります。水道の有無は、管理事務所への電話一本で分かります。
ここまでで3つ。線香、着火具、花。あとは、その日に出るごみを持ち帰る袋を1枚。手を合わせる日の荷物は、これで足りています。
なくても差し支えないものから、先に外す
数珠は、あれば持っていきます。ないなら、そのままで差し支えありません。宗派の公式サイトを確認した範囲では、持っていないことを咎める記述は見当たりませんでした。同時に、必ず持つようにと明示した記述も確認できていません。宗派によって呼び名も意味づけも変わりますので、その整理はお墓参りで決まっていることと、決めてよいことに譲ります。
半紙や懐紙は、お供え物を石の上に直接置かないための紙です。ただ、供えたものをその場で下げて持ち帰るのなら紙が要る場面はほとんどありませんので、菓子や果物を置いて帰るつもりがないのであれば、鞄から抜いてしまってよい品です。
湯呑も同じ位置づけになります。故人が好きだった飲み物を注ぐために持っていく方はいらっしゃいますが、これも供えたら下げて帰ります。持たなかったからといって、その日にできることが減るわけではありません。
専用の洗剤やブラシも、掃除をしない日には関係のない品です。よその記事に載っている持ち物の一覧をそのまま鞄へ写していくと、その日は一度も取り出さないものが半分近くを占めることになります。掃除をするのか、しないのか。まずそこを決めてしまえば、荷物は自然に二つへ分かれます。
火をつける道具は、風とセットで考える
屋外の墓前は、思っている以上に風が通ります。線香に火をつけようとして、何度もマッチをすってしまう。よくある場面です。
ライターを選ぶなら、風に強いものにしておきます。着火口が長く、炎が横から吹かれにくい構造のものであれば、しゃがんだ姿勢のまま線香の束へ火をまわせますので、風の通る日でも手間取る時間が短くなります。ろうそくを灯すなら、風よけの付いた燭台があると、点いた火が保ちます。
ろうそくについては、正直に書いておきます。屋外では、灯してもすぐに消えます。風よけを持っていない日に、何度も点け直そうとしなくて構いません。灯すことの意味はろうそくを灯す理由で扱っていますが、荷物の話としては「風よけの燭台を持っていく日だけ、ろうそくも持つ」と決めてしまうほうが現実的です。
火の始末だけは、道具の話とは別に残ります。公益財団法人東京都公園協会が発行している『都立霊園樹林型合葬埋蔵施設使用の手引』には、「火のついたお線香は火災の原因となります。お帰りの際にはお線香の火が消えたことを必ず確認してください」と書かれています。消えたあとの線香を扱うのに、軍手が一組あると手が汚れません。
荷物が増えるのは、掃除まで済ませる日
草を抜き、墓石を洗うところまでやると決めた日は、荷物が別の量になります。
足されるものは、用途で4つに分かれます。水を運ぶもの、こすって落とすもの、拭き取るもの、出たものを入れるもの。用途ごとに1つずつで足りることが多く、同じ用途のものを2つ持っていっても、たいてい片方は鞄から出さないまま帰ることになります。
では、そのうち何を実際に鞄へ入れるのでしょうか。用途ごとに1つ、というのがひとまずの答えになります。ただし、道具の名前を並べる前に確かめておきたいことがあって、用途によっては、そもそも現地に置いてある可能性があるのです。
| 用途 | 持っていくか、借りるか | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 水を運ぶ | 借りられることがある | 手桶とひしゃくを共用の置き場に備えている霊園がある。私物を置いて帰るのは断られる |
| こすって落とす | 持っていくのが基本 | 石の表面を傷めるものがある。何を選ぶかは道具そのものの問題 |
| 拭き取る | 持っていく | タオルや布。かさばらないので鞄に入れやすい |
| 掃き集める | 借りられることがある | ほうきとちりとりを備えている霊園がある。事前に確認できれば持たずに済む |
| 入れて帰る | 持っていく | 袋。何枚要るかは、その霊園のごみの扱いで変わる |
洗剤と研磨材については、鞄に入れる前に確かめておきたいことがあります。石の種類で使えるものが変わるからです。よく落ちるという理由だけで選ぶと、墓石の表面を傷めます。どれを避けるべきかはお墓掃除に使ってはいけないものに、掃除そのものの手順はお墓掃除の仕方に、服装はお墓掃除の方法とお参りのマナーにあります。
脚立が要るかどうかは、区画によります。背の高い墓石で上部まで拭きたいときに持ち出す方がいますが、園内で立ててよいかどうかを決めるのは管理者ですので、はるばる運んでから断られると、その重さが丸ごと無駄になります。これも電話で聞けることです。
持っていく前に、その霊園に何が置いてあるかを数える
持ち物の解説は、たいてい「必要なのはこの8つです」と一覧を出したあとで、末尾に「備え付けがあることもあります」と一行だけ添える形をとっています。順番が逆だと思っています。
現地に何があるかで、持っていくものは決まります。先に数えるべきなのは、鞄の中身ではありません。霊園の設備のほうです。
都立霊園が公表しているのは、制度があることまで
公益財団法人東京都公園協会が管理している都立霊園には、各園のページに「墓参用具の貸し出し」という独立した項目が置かれています。文言は共通でした。
「清掃やお手入れ用具の貸し出しを行っております。詳細は管理事務所までお問い合わせください。」(青山霊園)
ここで、書かれていないことに注意が要ります。貸し出しの対象は「清掃やお手入れ用具」まで。手桶、ひしゃく、ほうきといった品目名は、どのページにも書かれていません。青山霊園、谷中霊園、多磨霊園、雑司ケ谷霊園。確認した4園とも同じで、品目は公表されていませんでした。
ですから「都立霊園なら手桶が借りられる」とは書けません。言えるのは2つ。貸し出しの制度があると公式に明記されていること。そして、何が借りられるかは管理事務所に問い合わせるよう案内されていること。ここから先は、聞かないと分かりません。
その電話には、じゅうぶんな見返りがあります。借りられる品が分かれば、その分だけ鞄が軽くなるからです。手桶とひしゃくとほうきの3つが借りられると分かった日は、線香と花と布だけを提げて出られます。両手が空きます。
民営霊園には、常備品を具体的に公表しているところがある
民営の霊園では、置いてあるものを品目まで公表している例があります。
川崎清風霊園(運営は株式会社太平洋福祉)は、自園のよくある質問で、水場の常備品をこう書いています。
「着火台・スポンジ・花筒洗いブラシ・手桶・雑巾を常備しております。ご自由にお使いください」「花切り用のハサミも管理事務所にて貸し出ししております」(川崎清風霊園)
着火台まで置いてあるなら、ライターを持っていく必要が薄くなります。スポンジと布が常備されているなら、掃除道具の半分は鞄から抜けます。花切りバサミにいたっては、持っていこうと考える人がまずいません。ここまで品目を挙げて公表している霊園は多くありませんが、書いていないだけで実際には置いてある霊園もありますので、聞いてみる価値はあります。
手桶は、その日に借りてその日に返す
手桶をめぐっては、逆向きの注意が出ている霊園もあります。
東京多摩霊園(管理は株式会社悠石)は、手桶置き場に私物の手桶を置いたままにする使用者が出たことを受けて、こう案内しました。
「手桶置き場は霊園の施設であり、使用者様すべての方の公共施設です。」「一部のお客様の利益のために占有していいものではないと霊園は考えます。」(東京多摩霊園)
期限を過ぎて置かれている私物の手桶については、放置物とみなして霊園で処分することになる、とまで書かれていました。手桶は、その日に借りてその日に返す道具。買って現地に置いておく品ではありません。少なくともこの霊園では、そういう運用になっています。
寺院墓地は、寺務所に聞くのが早い
寺院墓地については、設備を公表している例を今回は確認できませんでした。ホームページを持たないお寺も多く、置いてあるものを事前に調べる手立てが限られます。
寺務所(じむしょ/お寺の事務窓口)に一本かけるのが、結局いちばん早い方法です。菩提寺(ぼだいじ/お墓があり、法要をお願いしているお寺)なら、そのついでに当日の段取りも聞けます。道具を貸してもらえるか、水はどこで汲むか、草はどう扱うか。作法を尋ねるのと違って、設備についての質問は答えが一つに決まりますし、お寺の側も日々同じことを聞かれていますので、こちらが身構える必要はありません。
貸してもらえるものと、買うしかないもの
掃除の道具は借りられることがある。では、線香と花はどうでしょうか。こちらは借りられません。焚けばなくなり、供えれば残らないものですから、そもそも貸し借りの対象になり得ないのです。
買うしかない。そして、園内で買えるかどうかが、霊園によって正反対に分かれます。
よくある質問のページには、こう明記されています。
「都立霊園ではお線香やお花を販売しておりませんが、霊園近隣の石材店や花屋でお求めになることができます。」(都立霊園 よくある質問)
買えるのは、門の外。入る前に済ませます。
同じ問いに、川崎清風霊園はこう答えていました。「常時、墓参花とお線香の販売をしておりますので、手ぶらで来られても問題なくお墓参りしていただけます」。売店があるかないかで、当日の行動が正反対になるわけです。
公式の文書が2本、正反対のことを書いている。どちらも正しいのです。それぞれの霊園にとっては、どちらもそのまま事実だからです。
| 項目 | 都立霊園 | 川崎清風霊園 |
|---|---|---|
| 清掃・手入れの用具 | 貸し出しあり。品目は公表されていない | 着火台・スポンジ・花筒洗いブラシ・手桶・雑巾を常備 |
| 花切りバサミ | 記載を確認できず | 管理事務所で貸し出し |
| 線香・花の販売 | 販売していない。近隣の石材店や花屋で購入 | 常時販売 |
| 手ぶらで着いた場合 | 園内では手に入らないため、門の手前で用意が要る | 問題なくお参りいただけると案内 |
この表が示しているのは、持ち物リストというものが霊園ごとにしか作れない性質のものだ、ということです。全国で通用する一覧は、作りようがありません。
買いそろえるなら、どこで手に入るか
一から用意するとなると、どこへ行けばよいのでしょうか。行き先は、思ったより限られます。
線香、ろうそく、マッチ、手桶、ひしゃく、掃除用のブラシ。この手のものは、100円ショップとホームセンターでおおむねそろいます。花は、スーパーの仏花コーナーか、霊園の近くの花屋。先ほどの案内が挙げていたのも、近隣の石材店と花屋です。石材店で線香やろうそくを扱っていることもあります。
通信販売でもそろいますが、届くまでの日数を見ておく必要があります。お盆やお彼岸の直前は動きが遅くなることがあり、当日に間に合わない事故が起きやすい。前の週までに手元に置いておくと安心です。
買う順番にも、ちょっとした工夫があります。焚けばなくなるもの、つまり線香・ろうそく・花を先に買う。手桶やブラシや軍手のように何度も使うものは、後回しでよいのです。こちらは現地で借りられる見込みがありますから、一度お参りに行って水場に何が置いてあるかを見てから買っても、まったく遅くありません。
電車とバスで行く日は、持てる量から逆算する
513名にお住まいをうかがったところ、東京・神奈川・千葉・埼玉が55.2%を占めました。お墓のほうは全国に散らばっています。生まれ育った土地に墓があり、自分は都市部で暮らしている。この距離が、そのまま荷物の話になります。
車で行けるなら、荷物の制約はほとんどありません。積んでおけば済みます。ところが電車とバスで向かう日になると、鞄に入る量と、その重さを提げて歩ける距離が、そのまま持ち物の上限になってしまいます。
持てる量には、はっきりした上限があります。片道2時間、乗り換え2回、最後はバス。この条件で運べるのは、肩から下げられる鞄ひとつぶんです。そこへバケツと脚立まで足すのは、無理があります。
ですから、置いていくものを先に決めます。水は現地で汲む。手桶とひしゃくは借りられるか聞いておく。ほうきも同じ。この3つを現地調達に回せると、残るのは線香、着火具、花、布、軍手、袋。ぜんぶ鞄に入ります。
花は、途中で買うほうが傷みません。乗り換えのある道中で抱えていると、着くころには花びらが落ちています。霊園の最寄り駅に花屋があるかどうかは、地図で先に見ておけます。
それから、帰りの荷物。行きより増えることを忘れがちです。下げた花、掃除で出たごみ、飲みかけのペットボトル。行きの時点で鞄が満杯になっていると、これらの置きどころがなくなって、手に提げたまま乗り換えを繰り返すことになります。8割で出るのが、ちょうどよい目安です。
高齢の家族と行くなら、荷物を先に分ける
親御さんと一緒に行く日は、荷物の総量より配分のほうが効いてきます。
重いものを一人が持ち、軽いものをもう一人が持つ。当たり前のようですが、現地で分けようとすると、水を汲んだあとになってから重さに気づく、という順番になりがちです。水の入った手桶は、想像よりずっと重いのです。
先に決めておくのは3つ。誰が水を運ぶか。誰が花を持つか。休める場所はどこか。日陰のあるベンチが園内にあるかどうかも、管理事務所に聞けば分かることですので、区画までの距離とあわせて確かめておくと、当日の歩き方が決まります。
貸出用の車いすを置いている霊園もあります。青山霊園が3台、多磨霊園が2台、谷中霊園が1台。使いたいときは管理事務所に申し出るよう案内されていますが、いずれも台数がごく限られていますので、お彼岸やお盆のように混み合う時期に当てにするのであれば、事前に確認しておくほうが確実です。
ご相談のお電話で理由をうかがうと、お墓までの移動が体力的につらいという方が25.5%いらっしゃいました(複数回答、回答102名)。距離そのものより、荷物を持って移動することのほうがこたえる、という声もよく聞きます。持つものを減らすのは、それだけで足を運びやすくする工夫になります。
夏に足すもの、冬に足すもの
季節で増える荷物は、お墓のためのものではありません。自分のためのものです。
夏に足すのは、飲みもの、帽子、汗を拭く布、虫よけ。日陰のない区画で草を抜いていると、30分でこたえます。お盆の時期に行くのであれば、開門とほぼ同時に着いて、日が高くなる前に手を動かし終える組み立てにしておくと、荷物も水も少なくて済みます。汗を拭く布は、墓石を拭くものとは別に用意しておきます。
虫については、蚊より蜂のほうが厄介です。植え込みや灯籠の陰に巣ができていることがありますので、見つけたら手を出さず、そのまま管理事務所へ伝えてください。自分でどうにかしようとしない。それだけです。
冬に足すのは、手袋、カイロ、滑りにくい靴。水仕事をすると手がかじかんで、線香に火をつけるのに手間取ります。ゴム手袋の下に薄い手袋を重ねておくと、指先の感覚が残りますので、そのぶん作業を続けられます。雪の残る地域では通路が凍っていることがありますので、足元を優先してください。
どちらの季節も、荷物が増えるぶん、掃除の範囲は狭めておくとちょうどよくなります。全部やろうとして、暑さや寒さのなかで粘ることになりがちなところです。
掃除の最中、荷物は無防備になる
草を抜いているとき、鞄はどこにありますか。たいていは、少し離れた通路の上か、隣の区画の縁石の上です。しゃがんで手を動かしているあいだ、視線は足元にしか向いていません。
東京都公園協会の『都立霊園樹林型合葬埋蔵施設使用の手引』に、こう書かれています。
「墓参中の置き引き被害が発生しております。墓参の際には手荷物から目を離さないようにしてください。また、お彼岸等の混雑が予想される時期の墓参には、公共の交通機関をご利用ください。」(都立霊園樹林型合葬埋蔵施設使用の手引)
管理者がわざわざ注意喚起を出しているということは、実際に起きているということです。持ち物の解説でここに触れているものを、今回はほかに見つけられませんでした。
対策は難しくありません。財布と鍵とスマートフォンは、身につけるものに入れる。小さなポーチかウエストポーチが一つあれば、しゃがんでも立っても持ち替えずに済みますので、掃除のあいだも中身のことを考えずに手を動かせます。道具の鞄は、視界に入る場所に置く。この2つです。
手引が公共交通機関を勧めているのには、駐車場の事情もあります。お彼岸やお盆の中日は、園内の駐車場に入れないことがある。車のトランクを荷物置き場として当てにしていると、混雑した日ほどその当てが外れますので、はじめから持てるだけを持つ組み立てにしておくほうが安全です。
置いて帰れるものと、袋に入れて帰るもの
袋を何枚持っていくか。地味です。ただ、これを外すと現地で確実に困ります。
掃除で出た草や枝葉は、都立霊園の場合、園内の下げ花置き場かごみ集積場に捨てられます。一方で、菓子やくだもの等のお供物、花を包んでいた紙やビニール、持ち込んだビン・カン・ペットボトル、弁当の空き箱は、持ち帰るよう案内されています(都立霊園 よくある質問)。草は置いていける。供えたものは持って帰る。この線の引き方です。
ですから袋は2枚。草を入れる袋と、持ち帰るものを入れる袋。持ち帰るほうは、汁の出るものが入る可能性を考えて厚手のものにしておくと安心です。
草も持ち帰る決まりの墓地なら、袋はもっと要ります。ひと夏を越したお墓だと、抜いた草だけで大きな袋が一つ埋まってしまうことも珍しくありませんので、袋の枚数は事前に確かめておきたい項目です。ごみの扱いが霊園によって違う件は、お墓参りの柱記事のほうで整理しました。
供え物そのものについては、施設によってさらに細かい規定があります。樹林型合葬埋蔵施設の手引には、こう定められていました。
「献花台(線香台)には、花及び線香以外のものを置いたままにすることはできません。法事等でお供物を供えた場合は必ずお持ち帰りください。特に、卒塔婆やお酒・タバコ等のお供えは固くお断りします。」
置いたままにできないのは、花と線香を除くすべて。裏を返せば、献花台とあわせて線香台が設けられているのですから、その場で火を使うこと自体は、はじめから想定されているわけです。「合葬施設や樹木葬では火が使えない」という説明を見かけることがありますが、少なくともこの手引にそうした記述はありませんでした。制限されているのは、置いて帰れるものの範囲です。
なお、火気の持ち込みそのものを禁じている霊園があるかどうかは、今回、公式の文書では確認できませんでした。納骨堂や樹木葬では火気を禁じているところが多い、と書いている民間の解説はありますが、その裏づけとなる規定にはたどり着けていません。線香を使ってよいかどうかは、その施設に直接お尋ねください。
お供え物を何にするか、供えたあとどう扱うかはお供え物の意味とマナーにまとめてあります。
手ぶらで行った日に、できること
手ぶらでお墓参りに行くのは、失礼にあたるのでしょうか。失礼にはあたりません。ただ、その日にできることは、霊園が何を売っているかで決まります。
園内で花と線香を売っている霊園なら、手ぶらで着いてもふだんどおりのお参りができます。川崎清風霊園が「手ぶらで来られても問題なくお墓参りしていただけます」と書けるのは、売店があるからです。
売っていない霊園では、話が変わります。手ぶらで都立霊園に着いてしまうと、園内では線香も花も手に入りませんので、いったん門を出て、近隣の石材店か花屋まで戻ることになります。
では、何も持たずに着いてしまったらどうするか。手を合わせて帰れば、それでお参りです。花を供え、線香を焚くのは、そこへ至るための形。形が整わなかった日を、失敗と数える必要はありません。
仕事の帰りに立ち寄る。出張のついでに寄る。そういう日は、たいてい手ぶらになります。数分でも墓前に立てた日は、それで十分に成り立っています。次の機会に花を持っていけば足ります。
お墓参りの持ち物についてよくある質問
数珠を持っていないのですが、用意したほうがよいですか
持っていないままで差し支えありません。宗派の公式サイトを確認した範囲では、持っていない人を咎める記述は見当たりませんでした。用意するなら、ご自身の宗派に合った形のものを選びます。宗派ごとの違いはお墓参りで決まっていることと、決めてよいことで扱っています。
水は持っていったほうがよいですか
水汲み場のある墓地なら要りません。ペットボトルで運ぶより、現地で汲むほうが圧倒的に楽です。水道の有無だけ、事前に管理事務所へ確かめておいてください。水場のない区画では、汲める場所までの距離も聞いておくと段取りが立ちます。
半紙は必要ですか
お供え物を置いて帰らないのであれば、なくても構いません。石の上に直接置きたくないときに敷く紙で、供えてすぐ下げるなら出番がないためです。持っていくなら、風で飛ばないよう上に何か載せる工夫が要ります。
友人や知人のお墓に伺うときは、持ち物が変わりますか
花と線香があれば十分です。掃除道具は要りません。他家のお墓に手を入れることになるためで、草が伸びていても、気になった点はご家族に伝えるにとどめるほうが無難です。園の場所と区画の番号を先に教えていただくのも忘れずに。
樹木葬や納骨堂だと、持ち物は変わりますか
変わります。個別の区画に手を入れる場面がないぶん、掃除の道具は不要になります。樹林墓地のように、献花台へ花と線香以外を置いて帰れない施設もありますので、供え物を持っていくのであれば、供えたあとそのまま持ち帰る前提で、量も中身も決めておいてください。施設ごとの規定が最優先です。使用の手引が配られている場合は、目を通しておくと確実です。
買った道具を霊園に置いておくことはできますか
できないところがあります。東京多摩霊園は、手桶置き場に私物を置いたままにしないよう案内し、期限を過ぎたものは放置物とみなして処分すると書いています。道具は持ち帰るのが基本と考えておいてください。
荷物の重さが、行けるかどうかを決めることがある
最初の3つに戻ります。線香、火をつけるもの、花。手を合わせるだけの日なら、これで足ります。
そのうえで、確かめたことを並べ直します。掃除の道具は、霊園によって借りられる。都立霊園は貸し出しの制度を公式に案内していて、ただし品目までは公表していない。線香と花は貸し借りの対象にならず、園内で買えるかどうかは霊園ごとに正反対に分かれる。置いて帰れるものの範囲も、施設によって違いました。
共通して言えるのは、電話一本で荷物が減るということです。水道はあるか。用具は借りられるか。線香と花は園内で買えるか。草は置いて帰れるか。この4つを聞いておけば、鞄の中身はほぼ決まります。初めて伺うお墓なら、なおさら効きます。
荷物が重いと、足が遠のきます。これは実感として、はっきりあります。真夏の遠出に道具一式を担いでいく場面を想像したところで気持ちが止まってしまい、その年のお参りが先送りになる、という話は何度もうかがってきました。鞄ひとつで行けると分かっていれば、思い立った日に出られます。
減らせるところは減らして構いません。半紙も湯呑もろうそくも、その日の形を決めるものではないのです。線香に火をつけて、花を挿して、手を合わせる。それだけの日でも、行けたことのほうが残ります。
荷物をどう減らしても難しい年は、人に代わってもらう手もあります。何をどこまで頼めるのかはお墓参り代行のサービス内容と料金とご利用の流れに、お墓のある地域が対象かどうかは対応エリアにまとめてあります。
持ち物は、そろえるほど正しくなるものではありません。その日に運べる量まで削って、残ったものだけを持っていく。それでお参りは成り立ちます。