供養と年中行事

お彼岸のお供えは何がいい?定番の品と金額の目安

お彼岸のお供えは何がいい?定番の品と金額の目安

お彼岸のお供えは、何を選ぶかより先に、どこに供えるかで答えが変わります。墓前に持っていくものは、その日のうちに持ち帰る前提。自宅の仏壇に置くものは、彼岸明けまで据えておく前提です。同じ「お供え」という言葉でも、選ぶ基準がちょうど裏返しになります。

この分岐を踏まないまま品物から考えると、当日になって困ります。墓前に大きな詰め合わせを持っていって、置き場所がありません。仏壇に生の果物を供えて、彼岸明けを待たずに傷ませてしまう。どちらも、置く場所を先に決めていれば起きなかったことです。

お彼岸そのものの日程や、期間がどう決まるのかは秋のお彼岸の日程にまとめてあります。ここでは、お供えだけを扱います。

お供えを決める前に、置く場所を確かめる

行き先は、大きく3つに分かれます。お墓の墓前。自宅や実家の仏壇。そして、実家や親族の家へ持っていく、あるいは送るぶん。この3つで、選ぶ基準も、掛け紙の要不要も、下げるタイミングも変わります。

観点 墓前に供える 自宅の仏壇に供える 実家・他家へ持参/郵送
置く時間 お参りのあいだだけ 彼岸入りから彼岸明けまで 渡したあとは相手に委ねる
選ぶ基準 軽い・個包装・汁が出ない 日持ちする・傷みにくい 日持ちする・分けやすい
敷くもの 半紙か懐紙(かいし)。袋のまま置かない 高坏(たかつき)や供笥(くげ)に懐紙 不要
掛け紙 不要 不要 必要(表書きは「御供」)
金額 決まりなし 決まりなし 一般に3,000〜5,000円
飲み物 墓石にかけない 宗派によって考え方が異なる
下げ方 その日のうちに持ち帰る 彼岸明けに下げる 相手の判断に任せる

いちばん効いてくるのは、表のいちばん上の行、「置く時間」です。墓前は数十分、仏壇は7日間。この時間差が、そのまま品物の条件を決めていきます。墓前のお供えに要るのは持ち帰りやすさ、仏壇のお供えに要るのは日持ち。求めるものが正反対なので、2つを混ぜて考えると、どちらの条件も中途半端になります。

お花は、3つのどこでも共通して使えるお供えです。ただ選ぶ種類は季節で変わりますので、春のお彼岸のお花秋のお彼岸のお花にそれぞれ書きました。以下では、食べ物や品物のほうに絞ります。

お墓に供えるとき——持ち帰る前提で選ぶ

墓前のお供えは、供えることより、下げることのほうが難しい。この往復を先に押さえておくと、選ぶものがはっきりします。手を合わせているあいだ供え、帰りに袋へ戻して持ち帰る。この往復に無理がないものが、墓前に向いたお供えです。

軽くて、個包装で、汁の出ないもの

条件は3つに絞れます。軽いこと。ひとつずつ包まれていること。汁気が出ないことです。

軽さが要るのは、お墓参りが荷物の多い外出だからです。お花、線香、ろうそく、掃除の道具、飲み物。そこへ重い箱菓子が加わると、駐車場から区画まで歩くだけで負担になります。斜面の途中に区画がある霊園、段差の続く山あいの墓地では、この差が体にはっきり出ます。

個包装がよいのは、下げたあとに分けやすいからです。供えたものを下げて家族でいただくことを「おさがり」と言い、これはお供えの本来の形とされてきました。個包装なら、その場で親族に配れます。切り分けの要る菓子折りや、包丁の要る果物は、墓地では扱いに困ります。

汁気については、桃や梨を思い浮かべてもらうのが早いはずです。皮が破れれば果汁が出ますし、ゼリーやプリンも蓋が外れれば同じことになります。缶や瓶の飲み物なら中身は出ませんが、今度は重さの問題が戻ってきます。

故人が好きだったものを供えたい、という気持ちは自然なものです。曹洞宗のように、家で食べているものでよいと公式に書いている宗派もあります。好物を供えること自体をどう見るかは宗派で分かれますので、「宗派によって考え方が違うところ」で改めて触れます。墓前に関して言えば、持ち帰れる形かどうかだけ確かめておけば足ります。

袋のまま置かない。半紙か懐紙を敷く

買った袋やレジ袋のまま墓石の上に置く。よく見かける光景ですが、本来は中身を出して供えます。

敷くのは半紙です。和菓子などを載せる小ぶりな二つ折りの紙を懐紙(かいし)と呼び、これでも構いません。水鉢や香炉の前、供物台のある区画ならその上に紙を敷き、包みを開けたお供えを載せます。紙を一枚挟むだけで、菓子の油分や果物の水分が石に直接触れずに済みます。弔事では折り方を慶事と左右逆にする習わしがありますが、折らずに一枚敷くだけでも十分です。

ここで困りやすいのが、供物台のない区画です。横に長い洋型の墓石、芝生墓地、樹木葬の区画では、そもそも物を置く場所が設けられていないことがあります。無理に墓石の上や花立ての脇へ載せると、傾いて落ちたり、風で飛んだりします。置き場所が見当たらないときは、手を合わせているあいだだけ手元や敷物の上に置き、そのまま持ち帰る形で構いません。区画によっては、供えて置くという前提そのものが合わないのです。

お参りが済んだら、紙ごと包んで持ち帰る。この手順まで含めて一組と考えてください。

お酒やジュースを墓石にかけない

好きだったお酒を墓石にかける。供養の形として語られることがありますが、石にとってはよくありません。

墓石に使われる御影石は、見た目に反して、わずかに水分を吸います。そこへ糖分やアルコールを含む液体がかかると、その糖分やアルコールが石の内部に入り込み、時間をかけてシミとして残ることがあります。石材店の石長は、お手入れの解説でこの点に注意を促しています(石長「お墓のお手入れ」)。これは石を扱う個々の店が経験から説明している内容です。業界団体が公式見解として出しているものは、調べたかぎり見当たりませんでした。一度石に入ったシミは、家庭でこすっても落ちません。

供えたいときは、コップに注いで供物台に置くか、缶や瓶を開けずにそのまま供えます。お参りが終わったら、中身は持ち帰るか、墓地の外で処理してください。区画の土に流すと、においが残って虫や動物を呼ぶ原因になります。水鉢に新しい水を入れるのは、これとは別の話です。水は石を傷めません。

供えたものを置いて帰らないほうがよい理由

供えたものを墓前に残して帰る。かつては珍しくない光景でした。今は事情が変わっています。

断っておきますが、これは「供えてはいけない」という話ではありません。宗派も自治体も、供えること自体は否定していません。求めているのは、お参りが済んだら持ち帰ってほしい、という一点です。

浄土宗が発行する浄土宗新聞は「墓地の汚れにつながることから、お供物を置いていくことは禁止されているところも増えています。お花以外のものは持ち帰りましょう」と書いています(浄土宗新聞)。

霊園を管理する自治体も、同じことを案内しています。

発信元 書かれている内容
東京都公園協会(都立霊園) 献花台には花と線香以外のものを置いたままにできない。法事等でお供物を供えた場合は必ず持ち帰るよう案内
札幌市 熊、カラス、キツネなどをおびき寄せる原因になるため必ず持ち帰るよう依頼。霊園内にごみ箱はなく、線香・ろうそくの消火も求めている
西宮市(兵庫県) カラスが花立の花を抜いたり、お供え物を食べたりすると注意を喚起
大阪市 カラスなどが食い荒らすため、お参り後は各自で持ち帰るよう依頼
鹿沼市(栃木県) クマ等の野生動物を誘引する原因になるため、市営墓地・見笹霊園内のお供え物は持ち帰るよう案内(2026年7月)
弟子屈町(北海道) カラスやキツネなどを誘き寄せる原因となるため、必ず持ち帰るよう依頼
山田町(岩手県) カラスやクマの餌となり、食い荒らしや糞害が発生していると報告(2025年11月)

ここに挙げたのは、それぞれの管理者が自分の墓地について出している案内であって、全国一律の規則ではありません。墓地埋葬法が定めているのは埋葬と管理についてで、供物には触れていません。それでも、北海道から関西まで、気候も規模も違う管理者が同じことを書いています。なぜでしょうか。

彼岸明けにうかがうと、供えられた菓子の袋が破れて散っていたり、果物が食べられた跡だけ残っていたりする区画に出会うことがあります。カラスや小動物の仕業です。これまでに638か所の霊園・寺院でお墓の清掃をしてきましたが(当社の施工実績より)、地域を問わず見かける光景です。彼岸明けに立ち会わないかぎり、その状態は目に入りません。

荒らされなかった場合でも、菓子は溶け、果物は熟して崩れ、包装は風で飛びます。飛んだ先はたいてい隣の区画です。自分のお墓を整えたつもりが、お隣の区画にご迷惑をかけてしまう。持ち帰りが求められる、いちばん現実的な理由がここにあります。

お花の扱いは、少し分かれます。浄土宗の文面も「お花以外のものは」という書き方で、生花はそのまま挿しておける霊園が多いところです。ただ、お花も荒らされます。西宮市は、カラスが花立の花を抜くと書いています。北海道の真駒内滝野霊園は、対策として供花を輪ゴムで固定する方法をすすめています(真駒内滝野霊園)。ひと手間ですが、効きます。造花を禁じる条例や霊園規則は、調べたかぎり見当たりませんでした。方針は霊園ごとに違いますので、使う前に管理事務所へ確かめてください。

置いて帰るものとして見落とされやすいのが、火です。藤沢市消防局は「お彼岸の時期を中心に、墓地での芝生火災が多発しています」として、風の強い日は線香などの火気の使用を控えること、手桶に消火用の水を用意しておくことを呼びかけています(藤沢市消防局)。お彼岸という時期を名指しした、公的な注意喚起です。線香やろうそくが燃え尽きたのを見届けてから帰る。これも持ち帰りと同じ、後始末の一部です。

管理事務所に一度うかがっておくと、迷いが減ります。聞いておきたいのは、お供えを置いて帰ってよいか、造花を使ってよいか、花立てに挿せる本数に決まりがあるか、線香の火をどう扱えばよいか、ごみ箱があるかの5つ。初めて訪れる霊園なら、最初のお参りのときに管理棟へ寄っておけば済みます。

仏壇に供えるとき——7日間もつものを選ぶ

仏壇のお供えは、置いたままにできるぶん、傷みとの付き合いになります。彼岸入りから彼岸明けまでの7日間、この日数を前提に選びます。

何を、どこに置くか

曹洞宗は公式サイトで、仏壇へのお供えを香り(線香、お香)・花・灯明・お水・飲食の5つとして説明しています(曹洞宗「お仏壇のまつり方」)。飲食(おんじき)には、お霊膳のほか果物、菓子、嗜好品が挙げられています。この5つは仏具店や葬儀社の解説で「五供(ごくう)」と呼ばれますが、曹洞宗の公式ページはその語を使わず「5つのお供え」と書いています。経典に由来する用語というより、仏事の実務で通用している呼び名と受け止めておくのが正確です。

仏壇には、お供えを載せる脚の付いた台が備わっていることがあります。高坏(たかつき)や供笥(くげ)と呼ばれるもので、ここに懐紙を敷いてから品物を載せます。台がなければ、小皿に懐紙で構いません。お水やお茶を供えるかどうかは宗派で分かれますので、これも「宗派によって考え方が違うところ」にまとめました。

7日間を通して置くなら、常温で日持ちするものを選びます。個包装の焼き菓子、水ようかん、乾物、日持ちのする果物。生菓子や生クリームを使ったものは、その日のうちに下げる前提で供えます。

いつ下げて、どうするか

下げるのは彼岸明けです。傷みやすいものはそれを待たず、供えた日のうちに下げます。

下げたものは捨てずにいただきます。これがおさがりです。家族で分けて食べるところまでが一連の流れであって、下げること自体に失礼はありません。むしろ、傷んでから下げるほうが本意ではないはずです。果物のように傷みの進み方が読みにくいものは、彼岸の途中で入れ替える形でも構いません。

お仏飯(ぶっぱん)や水は、宗派によって作法が細かく決まっている場合があります。菩提寺(ぼだいじ/お墓があり、法要をお願いしているお寺)の指示があれば、そちらを優先してください。

実家や親族の家に持っていくとき

実家や親族の家へうかがうとき、悩みどころは品物そのものより、渡し方のほうにあります。

手土産とお供えは、分けたほうがいいのか

この2つは、宛先が違います。手土産は迎えてくれるご家族へ。お供えはご仏前へ。性質が別なので、分けて用意するのが本来の形です。

とはいえ、実家に自分の親が住んでいる、毎年うかがっている、という間柄で2つ用意するのが大げさに感じられることもあります。その場合はお供えを一つにまとめ、下げたあとに皆で召し上がっていただけるものを選びます。分けやすさが効いてくるのはここです。10人集まる家に6個入りを持っていくと、配るときに気を遣わせます。

玄関で渡すか、仏壇に供えるか

自分で仏壇に置きにいかないのが基本です。渡すのは、部屋に通されてからになります。紙袋や風呂敷から品物を出し、「御仏前にお供えください」と添えてご家族に手渡してください。このとき、掛け紙の表書きが相手から読める向きにします。

地域やご家庭によっては、うかがった人が自分で仏壇に供え、そのまま手を合わせる習わしのところもあります。迷うときは「お供えさせていただいてもよろしいでしょうか」と一言うかがえば、その家のやり方に合わせられます。紙袋は持ち帰ります。袋ごと渡すのは、相手に処分を任せる形になるためです。

掛け紙が必要になるのは、どんなときか

掛け紙が要るのは、人に渡すときだけです。自宅の仏壇に供えるぶんにも、墓前に持っていくぶんにも要りません。この線引きを取り違えて、墓前用のお菓子に掛け紙をかけてしまう方がいます。

熨斗と掛け紙は違うもの

熨斗(のし)は、包み紙の右上に付いている細長い飾りのことで、慶事に使うものです。弔事では、この飾りの付かない紙をかけます。これが掛け紙です。店頭では「仏事の掛け紙で」と伝えれば通じます。

水引は、黒白または双銀の結び切りを使います。結び切りとは、固く結んで解けない結び方のこと。関西や北陸、山陰などには黄白の水引を使う地域がありますが、都道府県の線とは一致しません。贈り先の地域が分からないときは、その土地の仏具店や葬儀社に確かめるのが確実です。

宗派が分からないときは「御供」

水引の上に書く言葉は「御供(おそなえ)」。宗派を問わず使えるので、これがいちばん安全です。「御仏前」も広く使われます。薄墨を使うのは通夜や葬儀のときで、お彼岸のお供えは濃い墨で構いません。水引の下には、贈る側の名前を書きます。

「粗供養」は立場が逆

「粗供養(そくよう)」という表書きを見たことがあるかもしれません。これは法要を営んだ側が、参列してくださった方へ渡す返礼品に使う言葉です。西日本でよく用いられます。

持っていく側が書くものではありません。うかがう側と迎える側で、立場がちょうど入れ替わってしまいます。持参するお供えには「御供」を使ってください。

金額から決めると、たいてい選び直しになる

よく挙がるのは3,000〜5,000円という額です。仏具店や葬儀社の解説の多くがこの帯を示しています。ただしこれは各社が経験から書いている目安であって、統計調査にもとづく数字ではありませんし、決まりでもありません。

決める順番は、相手との間柄、その日の場面、金額、品物です。金額から入ると、たいてい選び直しになります。

間柄というのは、実家か、親族の家か、以前お世話になった方の家か、という違いです。実家に毎年うかがっているなら、その家のこれまでのやり方に合わせるのがいちばん自然になります。金額の話がそもそも出てこない間柄もあります。

場面というのは、お参りだけでうかがうのか、法要に参列するのか、会食まで用意されているのか。法要と会食が伴うなら、お供えとは別にお布施や御仏前が要ることもあります。場面を見ずに品物だけ立派にしても、釣り合いません。

忌明けを迎えて初めて迎えるお彼岸を初彼岸(はつひがん)と言います。この年は特別に厚くすべきなのでしょうか。実のところ、解説によって言うことが違います。特別に厚くすべきだと書くものもあれば、通常のお彼岸と同じで問題ないと書くものもあり、目安として一致していません。親族のあいだで慣習がある家も少なくありませんので、ご兄弟やいとこに一度うかがっておくと、ひとりだけ突出することも、足りずに気を揉むこともなくなります。

おはぎとぼたもち——「春秋で決まっている」は定説ではない

春はぼたもち、秋はおはぎ。お彼岸の記事のほとんどがこう書いています。辞書は、そこまで言い切っていません。

日本大百科全書の「ぼた餅」の項は、いくつかの語源説を挙げたうえで「いずれも定説ではなく、今日では春秋にかかわりなく、ぼた餅ともおはぎともよばれている」としています(日本大百科全書「ぼた餅」)。春秋で呼び分けるという理解そのものが、定説として扱われていません。

広く知られている説のほうも挙げておきます。春に咲く牡丹に見立てて「牡丹餅」、秋に咲く萩に見立てて「御萩」。農林水産省の食文化紹介ページも、この見立てを取り上げています(農林水産省「和ごはん」)。同じ農水省でも、郷土料理のデータベースでは「春はぼたもち、秋はおはぎと言われています」と伝聞の形になっていて、公的機関の側は断定を避けています(農林水産省「うちの郷土料理」)。

あんこの違いで分ける説もあります。粒あんがおはぎ、こしあんがぼたもち。この由来は秋のお彼岸の記事春のお彼岸の記事でそれぞれ触れました。

小豆の赤い色が災いを遠ざける、という話も知られています。これは民俗や食文化の領域の説明であって、仏教の教えとして説かれているものではありません。農水省の記述も「と言われています」という書き方です。

結局のところ、どちらを供えても差し支えありません。お店の呼び名が地域で違っていても、それで作法を外したことにはなりません。気になるようでしたら、その土地で売られている呼び方のものを選べば十分です。

「肉や魚を供えてはいけない」は、宗派公式に見当たらない

向かないとされる品物には、いくつか定番があります。根拠の確かさは、品によってまるで違います。宗派が公に説いているもの、慣習として避けられてきたもの、単に実務上の理由があるもの。この3つを分けて考えると、判断がぶれなくなります。

次の表は、一般に「避けたほうがよい」と言われている品の一覧で、その根拠を確かめた結果を右端に置いています。禁止事項の一覧ではありません。

避けるとされる品 言われている理由 確かめられたところ
肉・魚(三厭) 殺生を避ける精進の考え方 「供えてはならない」と明記した宗派公式は確認できず
にんにく・にらなど(五葷・五辛) 匂いが強く修行の妨げになるとされる 経典で確認できるのは「食べてはならない」まで
日持ちしないもの 供えている期間に傷む 実務上の理由。確かです
においの強いもの 線香やお花の香りと混ざる 実務上の理由。確かです
とげのある花・毒のある花・造花 ふさわしくないとされる 浄土真宗本願寺派は公式に避けるよう案内。他宗派は慣習。これは仏壇に供える花についての話で、霊園の規則とは別です

いちばん誤解されているのが、肉と魚です。生き物の命を絶つことを避け、野菜や穀物で食事を整える考え方を精進(しょうじん)と言います。獣・鳥・魚の肉を三厭(さんえん)、にんにくやにら、らっきょうなど匂いの強い野菜を五葷(ごくん。五辛とも)と呼び、この2つを外した料理が精進料理です。

お供えに肉や魚を用いてはならないと明記した宗派の公式ページは、浄土宗、浄土真宗の両派、曹洞宗、日蓮宗のいずれにも見当たりませんでした。三厭・五葷という語そのものが、仏具店や葬儀社の解説で通用している用語です。宗派の公式サイトには出てきません。

曹洞宗にいたっては、逆の方向に釘を刺しています。食に関する教えを説くページで「この食材制限だけに偏って狭く受け止めてしまうと、残念ながら禅の教えの本質から遠ざかってしまいます」「野菜も動物も命の尊さに差はないのです」と書いています(曹洞宗公式サイト)。避けるべきものの一覧表として受け取ること自体を、戒めているわけです。

五辛についても同じことが言えます。『梵網経』に「五辛を食することを得ざれ」という一節があり、大蒜(にんにく)など5種の名が挙げられています。ただしこれは口にすることを禁じた記述です。食べてはならないという教えから、供えてはならないという結論へ、公に橋を架けている資料は見つかりませんでした。

ここで分けておきたいのが、法要のお膳と日常のお供えです。法事のときに用意する御霊供膳(おりょうぐぜん)は、精進で整えるのが習わしとされています。一方、お彼岸に仏壇へ供える菓子や果物は、そのお膳とは別のものです。食材の制限が語られてきたのは主に前者についてで、それを日常のお供えにまで広げると、話が実際より厳しくなります。

実際、この慣習が当てはまらない地域もあります。沖縄では、お彼岸に重箱料理のウサンミを供え、そこに豚の三枚肉が入ります。避けるべきとされるものが、供物の中心として供えられている土地が現にあります。

好きだった食べ物が肉や魚だった、という場合は迷うところだと思います。実際に効いてくるのは、教義よりも実務の理由です。生の切り身や調理した料理は傷みが早く、においで動物を呼びます。墓前に置くのは避け、仏壇に供えるなら短い時間で下げてください。宗派の考え方が気になるようでしたら、菩提寺に一度うかがうのが確実です。

日持ちしないもの、においの強いものについては、精進とは関係のない実務上の話です。供えている7日間で傷むから避ける。線香やお花の香りと混ざるから避ける。理由がはっきりしているぶん、判断もしやすいはずです。

宗派によって考え方が違うところ

根っこにある考え方が、宗派ごとに違います。ここですべての宗派には触れられませんので、行き違いの起きやすいところに絞ります。

曹洞宗は「皆さんが召しあがる食事を」と書いている

曹洞宗の公式サイトは、飲食のお供えとして果物や菓子とならんで嗜好品を挙げ、「ご飯に限らず、皆さんが召しあがる食事を、お供えしてください」と書いています(曹洞宗「お仏壇のまつり方」)。特別な献立を組む必要はなく、家で食べているものでよい。故人の好きだったものを供えるという行為も、この考え方の延長で受け止められます。

浄土真宗では、故人の好物は供えない

浄土真宗は、供える相手のとらえ方がそもそも違います。浄土真宗本願寺派は、お供えを「阿弥陀さまにお敬いの気持ちを表す意味で行うもの」と説明しています。そのうえで「『亡き人が好きだったから』と、ビールや酒、たばこなどをお供えする方がいますが、お供えにはふさわしくありません」と書いています(浄土真宗本願寺派)。

真宗大谷派も同じ立場です。「お内仏に、写真を飾ったり、故人の好物(例えば、酒、菓子、タバコなど)をお備えしたりはしません」「お内仏は私たちの思いを入れるところではなく、浄土を表しているものなのです」と説明しています(真宗大谷派)。お内仏(おないぶつ)とは、真宗で仏壇を指す言い方です。

理由は、殺生でも作法でもありません。供養の向かう先が故人ではなく阿弥陀仏である、という教義から来ています。同じ考え方の延長で、本願寺派は「追善供養は必要ありません」とも述べています(浄土真宗本願寺派)。追善供養とは、遺された者の善い行いを故人に振り向けるという考え方のこと。真宗ではその枠組みを取りません。亡くなった方はすでに仏となっている、と考えるためです。本願寺派がお彼岸の法要を彼岸会(ひがんえ)とあわせて「讃仏会(さんぶつえ)」とも呼ぶのは、この考え方から来ています。仏をたたえる法要、という意味の呼び名です(浄土真宗本願寺派)。

お寺ごとの運用は、もう少し柔らかいこともあります。本願寺派のお寺のなかには、仏さまへのお供えは仏壇の中に、故人の好物は仏壇の横に置いた台に、という折衷の案内をしているところもあります(信行寺)。宗派の公式な説明と、菩提寺の案内は、必ずしも同じではありません。

「ご先祖様の供養をする期間」とひとくちに説明する記事は多いのですが、真宗の家ではその言い方が教義と合いません。親族と段取りを話すときに頭に置いておくと、行き違いが起きにくくなります。

お水やお茶を供えるかどうかも分かれる

飲み物の扱いは、公式サイトで確かめられる数少ない宗派差です。

宗派 お水・お茶
浄土真宗本願寺派 湯飲みなどでは供えない。華瓶に水を入れ、樒(しきみ)などの青木を立てる
曹洞宗 茶湯器に供える
日蓮宗 ろうそく・線香とあわせて茶湯と仏飯を供える

華瓶(けびょう)は、水を入れて青木を立てる小さな器のこと。樒(しきみ)は、仏事に使われる常緑の木です。本願寺派がこの形をとるのは、浄土には清らかな水が満ちているとされ、こちらから水を供える必要がないと考えるためです。真宗系の寺院では、同じように湯飲みやコップで水やお茶を供えることはしないという案内が見られます。日蓮宗は公式サイトで、ろうそく、線香、茶湯、仏飯を供えると説明しています(日蓮宗)。仏壇の中に華瓶があるかどうかを見れば、どちらの形か見当はつきます。

迷ったら菩提寺に聞く

宗派の考え方は、同じ宗派のなかでもお寺ごとに運用が違うことがあります。お供えを置いて帰ってよいか、飲み物をどう扱うか、法要のときに何を用意するか。こうした点は、菩提寺に直接うかがうのがいちばん確かです。お寺に作法を尋ねるのは、失礼にはあたりません。分からないまま自己流で通すほうが、あとで気まずくなります。

地域によって違うところ

慣習には、地域ごとの形があります。

彼岸だんごを供える地域では、彼岸入りの日と彼岸明けの日にそれぞれ供え、入り団子・明け団子と呼び分けます。彼岸そばや彼岸うどんを食べる土地もあります。

沖縄のウサンミは、豚の三枚肉や昆布、かまぼこなどを詰めた重箱料理です。地域によっては彼岸にお墓へ行かず、家の仏壇に手を合わせる家拝みが中心のところもあります。

水引の色にも地域差があり、黄白を使う土地があります。実家の土地の慣習が分からないときは、年長のご親族にうかがうのが確実です。「うちはこうしてきた」という答えが、たいてい返ってきます。

帰省できないとき、遠方から供える方法

行きたい気持ちはあっても、都合がつかない年はあります。距離、体調、仕事。事情はさまざまで、行けないこと自体を気に病む必要はありません。遠方からできることは、いくつかあります。

届く日から逆算する

実家や親族の家へ送るなら、彼岸入りから中日(ちゅうにち/お彼岸の真ん中の日で、春分・秋分の日にあたります)までに届くよう手配します。彼岸明けに届くと、供える期間が残っていません。

品物には掛け紙をかけ、表書きは「御供」。配送の伝票に隠れないよう、掛け紙を包装紙の内側にかける内のし(内掛け)にしておくと安心です。品物だけが届くと事情が伝わりませんので、うかがえない旨と近況を書いた手紙を同封するか、別便で送っておいてください。あるかないかで、受け取る側の受け止め方が変わります。現金を送る場合は現金書留を使い、品物と同じ箱には入れられません。

墓前に届けたいとき

お墓そのものを整えたい場合は、送るという手段が使えません。荷物を受け取る人がいないためです。現地の親族に頼む、霊園の管理事務所に清掃を依頼する、お墓参り代行を使う。方法としてはこのあたりになります。

ご依頼をいただくとき、いちばんよく聞くのは「しばらく行けていなくて気になっていた」という言葉です。遠方に住んでいて、足を運べない期間が長くなった。当社の利用者アンケートでも、ご依頼の理由としてこれがもっとも多く、52.9%でした(複数回答、回答102名、当社の利用者アンケートより)。お彼岸を含む3月と9月は、施工件数が2月の3倍を超えます(3月225件・9月236件/2月66件、当社の月別施工実績より)。

作業後には写真付きの報告書をお送りしますので、離れていてもお墓の状態を確認いただけます。依頼するときに何を確かめておくとよいかはお彼岸のお墓参り代行にまとめました。ご検討の際はご利用の流れと、お墓のある地域が対応エリアに含まれるかをご覧ください。

お彼岸のお供えについてよくある質問

お墓に供えたお菓子は、必ず持ち帰らなければいけませんか

法律で決まっているわけではありませんが、持ち帰りをお願いしている霊園が増えています。浄土宗新聞も、お花以外は持ち帰るよう案内しています。動物に荒らされたり、包装が隣の区画へ飛んだりするためです。お参りが済んだら包み直して持ち帰り、ご家族でいただくのが本来の形とされています。

墓前に持っていくお菓子にも掛け紙は要りますか

要りません。掛け紙をかけるのは、実家や親族の家へ持参する場合と、送る場合だけです。自宅の仏壇に供えるぶんにもかけません。人に手渡すものかどうかで判断してください。

お供えの金額はいくらが適当ですか

一般に3,000〜5,000円とされますが、事業者の解説が示す目安であって統計ではなく、決まりでもありません。相手との間柄と、その日の場面から決めるほうが実際に合います。金額から入ると選び直しになりがちです。

春はぼたもち、秋はおはぎと決まっているのですか

決まってはいません。牡丹と萩に見立てたという説は広く知られていますが、日本大百科全書は「今日では春秋にかかわりなく、ぼた餅ともおはぎともよばれている」としています。どちらを供えても差し支えありません。

肉や魚を供えてはいけませんか

お供えに肉や魚を用いてはならないと明記した宗派の公式ページは、確認できていません。殺生を避ける精進の考え方から、慣習として避けられてきたものです。曹洞宗の公式サイトは、食材の制限だけに偏って受け止めることをむしろ戒めています。実際に効いてくるのは、傷みの早さと、においで動物を呼ぶことのほう。沖縄のように豚肉を重箱で供える地域もあります。

お供えをいただいたら、お返しは必要ですか

お彼岸のお供えは、お返しが必須とされているものではありません。法要を営み、参列いただいた方へ返礼品をお渡しする場合は、表書きに「粗供養」や「志」を用います。郵送でお供えが届いた場合は、品物を返すよりも、届いた旨とお礼を電話や手紙で伝えるほうが、相手に負担をかけません。

置く場所さえ決まれば、迷うところは減る

お供えで迷うのは、たいてい、どこに置くものなのかが決まっていないからです。墓前なら軽くて個包装で汁の出ないもの、そして持ち帰る。仏壇なら7日間もつもの。人に渡すなら掛け紙をかけて、表書きは「御供」。この3つの分岐さえ通れば、店頭で悩む時間はずいぶん短くなります。

その先の細かいところ、宗派の作法や地域の慣習は、菩提寺や年長のご親族にうかがえば答えが出ます。自分で正解を探し当てなくてよい部分です。

お供えを用意して墓前に立つ。それができない年もあります。距離があって足を運べない、体力的に難しい。そうした事情はよくあることです。今年は難しそうだという方も、選ぶところまでは進めておいて、供えるのは次に伺えるときに回す。そういう組み立てでも構いません。

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27 , 500 税込

墓石清掃・雑草除去・お花・お線香
実施後の報告書(写真・コメント付)

  • お墓1基、区画1坪、営業所から1時間以内の交通費含む

受付時間/平日10:00~18:00(土日祝休業)